『シャイラク』の簡単な概要
【アマプラオリジナル映画百本ノック 1本目】
本作は2015年に公開された、Amazon Primeオリジナル映画です。本作はAmazonスタジオとして最初に制作された映画となっています。
鬼才スパイク・リーが古代ギリシャの戯曲『女の平和』を翻案し、現代風にリメイクした作品となっている本作。もともとの『女の平和』が風刺作品であるのですが、更に強烈でパワー溢れる作品に仕上がっています。
タイトルであるシャイラクのスペルはCHI-RAQ。シカゴの治安の悪さと、シカゴでの年間殺害者数がイラクやアフガンでの戦死者を上回ったことから付けられた渾名です。
『シャイラク』のキャスト
主演のリシストラタ役には『キャンディマン』や『ワンダヴィジョン』のテヨナ・パリス。彼女の恋人にして敵役でもあるシャイラク役にはコメディアン・ラッパー・俳優と多彩な才能を発揮されているニック・キャノン『ザ・ミスフィッツ』『実験室KR-13』をキャスト。
シャイラクのライバル、サイクロプス役にはウェズリー・スナイプス『ブレイド』『デモリションマン』。それ以外にもアンジェラ・バセットやデイヴ・シャペル、ジョン・キューザックなどの有名キャストが揃っている本作。狂言回し役にサミュエル・L・ジャクソンまで呼んでいるのですから豪華です。
『シャイラク』のあらすじ(ネタバレあり)
舞台はシカゴのサウスサイド。主人公のリシストラタ/テヨナ・パリスの恋人であるシャイラク率いるスパルタンとサイクロプス率いるトロジャンとの争いに巻き込まれ、一人の少女が亡くなった。
争いによって家を失ったリシストラタは非暴力主義者であるヘレンの家に間借りすることになり、その際にヘレンから第二次リベリア内戦の際に平和運動を組織したレイマ・ボウィの話を聞く。
そこからヒントを得たリシストラタは男たちが抗争をやめるまで性交渉を行わないという運動を組織。スパルタン側の女性たちだけでなく、トロジャン側の女性も味方に付けたリシストラタの運動は各地に広がっていく。
抗争に巻き込まれて亡くなった少女パティの葬儀で現在のシカゴの現状や人種問題などについて熱弁を振るう神父からも、サウスサイドの争いで利益を得ている者たちへのヒントを得たリシストラタは、仲間の女性たちと共に軍の武器庫へと潜入。指揮官たちを人質に取り、武器庫の占拠に成功する。
このリシストラタ達の行動で問題はシカゴだけに留まらなくなり、運動は世界中に広がっていく。
シカゴ市長などは武器庫を包囲し、行動をやめさせようとするも上手く行かない。
占拠から3ヶ月後。女性恋しさにスパルタンとトロジャンの抗争は下火となっていた。それでもシャイラクはこの運動に反抗していたが、市長の妻や大統領のファーストレディーにまで運動が広まったこともあり、圧力を受けたシャイラクはリシストラタと話し合いを行うことに。
その「話し合い」とは、ベッドの上で行うことだった。しかし「話し合い」の途中にリシストラタが予め招いておいたサイクロプス率いるトロジャンが乱入。サイクロプスたちは銃を置き、平和に賛同することを述べる。
翌日休戦協定の場で、リシストラタ、市長、サイクロプスは協定書にサインを行うが、シャイラクだけは頑なにそれを拒む。しかしこれまでにギャング抗争に巻き込まれて亡くなった数々の子どもたちの遺族たち、そしてヘレンから彼女の娘を殺したのはシャイラクの父である事を告げられ、父のように罪を贖って欲しいと伝えられ、ついに彼はパティの母親の元に跪き、パティを殺したのは自分であると自白する。
シャイラクは連行される中、「自分の罪を告白しろ、自分のようになるな」と皆に告げる。
最後にこれまで幾度となく作中に登場していた老人ドルメデスが再度登場し、視聴者に対して語りかけ、エンド。
『シャイラク』の感想
一見滑稽に見えるが…
あらすじだけだと一見コメディのように見える本作。もちろんコメディ要素はありますが、それ以上に人種問題、貧困問題、女性問題、警察と民衆との衝突、その他諸々の社会問題への意識が強いシリアスな作品だと感じました。
それが最も強く現れているのはジョン・キューザック演じる神父が熱弁を振るう葬儀シーン。演技の熱量といい、メッセージの強さといい、かなり強烈なものでした。
古典を蘇らせた試み
前述した通り、スパイク・リーが古代ギリシャの劇を翻案しているのが本作です。
大筋は元の劇の内容を踏襲しているようですが、中身は全然別物。ここまでバッサリと出来るのか…と驚きました。
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